親会社の連結財務諸表作成のための財務報告を子会社・関連会社は拒否できるのか?

親会社が連結財務諸表を作るためには子会社・関連会社の財務情報が必要

金融商品取引法に基づく有価証券報告書の開示義務を負っている上場企業が、2以上の企業からなる企業集団を構成している場合、親会社は単独財務諸表の開示と合わせて連結財務諸表を開示する必要があります。

また会社法でも、有価証券報告書を提出している大会社は連結計算書類を作成することが必要です。

これら連結財務諸表や連結計算書類を作成するためには、親会社および子会社・関連会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎としなければならないことから、親会社は連結財務諸表を作成するためには兎にも角にも、連結対象となる個別財務諸表と連結処理に必要な財務情報を子会社・関連会社から入手する必要があります。

実務上は、親会社が計画した連結決算スケジュールに沿って、子会社や関連会社は一定の日までに所定の財務情報を自ら報告しているのが一般的ですが、子会社や関連会社はその報告を拒否できるのか?と、ふと気になったので調べてみました。

簿記や会計の世界では子会社の財務情報を入手することは常識すぎるのですが、そこに法的根拠はあるのでしょうか。

なぜ親会社は子会社・関連会社に個別財務諸表その他の財務情報を要求できるのか?

「親会社だから」と言ってしまえばそれで終了のお話なのですが、100%支配の完全子会社ならともかく、少数株主がいる子会社や合弁企業が株主のうちの1社に対して自社の財務情報を詳らかに開示する義務が本当にあるのでしょうか?

もっと極端な例では、敵対的買収を仕掛けられた結果、意図せず他の株主に影響を受ける立場になってしまった関連会社(被持分法適用会社)が仲良くもない株主に財務情報を開示しなければならないのでしょうか?

会計帳簿閲覧謄写請求権(会社法第433条)

第433条

1. 総株主の議決権の百分の三以上の議決権を有する株主又は発行済株式の百分の三以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。

一.  会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求

二.  会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

2. 前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。

一. 当該請求を行う株主がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。

二. 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。

三. 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。

四. 請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。

五. 請求者が、過去二年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

3. 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿又はこれに関する資料について第一項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。

4. 前項の親会社社員について第2項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。

簡単に言えば、「株式会社の議決権の3%以上を有している株主は、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧または謄写を請求することができる。」というものです。 規定上は「理由を明らかにして請求」しなければならないとなっているのと、「資料の閲覧または謄写」となっていることから、子会社・関連会社が積極的に自らの財務情報を、忙しい決算の手続きに組み込んで自ら報告する根拠としては弱いように思います。

また、親会社と対象会社が第2項2号や3号に該当する関係であるケースもあり得るように思います。

議決権を通じた取締役選任権の存在(会社法第341条)

第341条
第309条第1項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行わなければならない。

株主の意に沿わない取締役(代表取締役含む)の解任権をチラつかせることで言うことを聞かせるという強硬な発想です。

支配権を有している子会社に対しては有効でしょうが、合弁企業や持分法適用対象となる関連会社に対してとなると、親会社(便宜上そう呼びます)の議決権だけでは賛成多数を得ることはできないので効果はないでしょう。

会社間契約の存在

法律に定めがないとすれば、親会社と子会社・関連会社間で個別に会社間契約を結び、親会社に対する報告義務を課すということも考えられます。近代社会には契約自由の原則という基本原則がありますので、当事者間で合意すればこれは有効でしょう。

ただし、契約である以上、当然ながら当事者双方が合意して初めて成立するものであり、一方の意に沿わない報告義務を課すことは余程の好条件が差し出されない限り難しいでしょう。

むしろ合弁企業や持分法適用対象である関連会社が一方的に不利となる契約を結んだとしたら、その会社の代表取締役は株主代表訴訟による損害賠償請求の対象になるかも知れません。

まとめ(未解決!!)

いずれも腹落ちしない部分がありますが、上記のようなところが、今のところの私の整理です。 会計基準はあくまでルールであり、それ自体が直接的に義務を課す性質のものではありませんので、何らか根拠があるとすれば法律になるのでしょうが、私が知る限り、会社法にはそれを規定した条文はないと思います。

法律は基本的に施行されている国のエンティティに対して義務を課すものですので、特に日本の親会社の場合には、海外の子会社・関連会社に報告を求める根拠にはならないように思います。

有識者からのコメントお待ちしております。。。