監査法人の「業務及び財産の状況に関する説明書類」とその「公衆縦覧」について

業務及び財産の状況に関する説明書類とは

「業務及び財産の状況に関する説明書類」とは、監査法人が公認会計士法第34条の16の3に基づき作成が義務付けられているもので、作成した説明書類は監査法人の事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければなりません。

「業務及び財産の状況に関する説明書類」には次のような情報が記載されています。

  • 業務の概況

  • 社員の概況

  • 事務所の概況

  • 監査法人の組織の概況

  • 財産の概況

  • 被監査会社等(大会社等に限る)の名称

金融商品取引法監査の被監査会社については、金融商品取引法が潜在的株主である投資家に対する情報開示を強く意識していることから、Edinetを通じて開示される有価証券報告書および監査報告書を見れば誰でも調べることができるのですが、会社法監査は現在の株主のための監査という性質を持つことから、基本的に株主以外が監査報告書を目にする機会はありません。

そんな状況の中、「業務及び財産の状況に関する説明書類」の「被監査会社等(大会社等に限る)の名称」には大会社である被監査会社が記載されており、会社と利害関係のない外部の人間が監査法人を知ることができる、おそらく唯一の手段です。

最近では「業務及び財産の状況に関する説明書類」はインターネットを通じて公開する監査法人も増えてきており、 これを見れば、基本的に誰でも、四大監査法人の監査クライアント(の一部)を知ることが出来ます。

ある日の出来事

先日「業務及び財産の状況に関する説明書類」を「公衆縦覧」したいと思い立ち、ある監査法人に問い合わせた際の出来事です。

そもそも私の理解では、「公衆縦覧」というのは、その本店または支店に備え置いた対象書類等を広く一般の閲覧に供するという意味であり、その閲覧を望む者にはその目的の如何(ここでは不法な目的は除きます)を問わず閲覧する権利があり、自己の負担によりその謄写や複写が許可されるものと思っていました。

ところが、そのとき問い合わせした某監査法人からの回答は次のようなものでした。

  1. インターネットでの公開は行っていない。

  2. 閲覧は本店のみで対応しており、支店での閲覧はできない。

  3. 複写は一切許可していない。

上記のうち、1については公認会計士法第三四条の一六の三第3項で「できる」規定となっていますので何の問題もないのですが、 2と3については、「公衆縦覧」という制度趣旨からして適法・妥当なのかどうかが引っかかりました。

窓口の方には極めて丁寧なご対応をしていただきましたし、監査法人の方針としてのご回答であることが伝わってきましたので、特にそれ以上突っ込むことはしませんでしたが、意外な回答でビックリしました。

(後日談ですが、某監査法人もその後Webサイトへの掲載を始めたようですので、非開示に強いポリシーがあったというよりは前例がない問い合わせだっただけだったのかも知れません。)

目的の監査法人の「業務及び財産の状況に関する説明書類」がすべてインターネット上に出揃ったことで、過去の話になってしまいはしましたが、ディスクロージャー実務における「公衆縦覧」の権利と制限等について、研究されている方がいらっしゃったら是非お話を伺ってみたいと思います。